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【感想】モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ

モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ (幻冬舎文庫)

僕がツイッターをやっているせいなのか、どうも最近、自分が納得いかないことに対してやたらと攻撃的な態度を表明する人が増えた気がする。ちょっと前まで「連帯」やら「オールジャパン」がフィーチャーされていたのに……、タイムラインは今やどこ吹く風といった様子だ。多くの人が、自分たちが持つ「常識」の殻に閉じこもってしまったのか。それも分厚くてトゲトゲの殻に。

 

 

そういう思いが強くなって何だか歯がゆいな~と感じやすくなったこの頃、この本に出合った。『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』。そして僕は、すっかりこの作者のことが好きになってしまった。

 

 

「モヤモヤするあの人」とはいかにも日常エッセイ的なタイトルであり、イラストもその印象を助長するのだが、この本はかなり広がりあると思っている。僕が最初に述べた「攻撃的な空気の萬栄」に対する処方箋になるとも思った。

 

 

本書は、表紙になっている「スーツにリュックを合わせる人」といった何だかちょっとモヤモヤする人たちが30タイプ挙げられており、それを6ページ前後で言及する構成になっている。そこに登場するのは、「社会規範よりも自分の考えを大事にするタイプ」だったり「自分のコミュニティ以外見えていないタイプ」だったり、「とにかく自分に自信があるタイプ」など。僕らの心に靄をかける、色んな価値観を持つ人が現れる。そして、時に共感したり、時にドキっとしたり、読者が自分の価値観と向き合う作りになっているのが面白い。

 

この本を読んで僕が特にほんわかさせられて、本に広がりがあると思ったり、「攻撃的な空気」への処方箋になると感じたのは、モヤモヤ人に言及する著者の姿勢だ。こういうタイプの本って取り上げる対象に一方的に苦言を呈する作りになっていることが多いけれど、本書はなるべく両側(モヤっとさせる人と、モヤっとさせられる人)の声を届けようという意思がみえる。イベントで著者が「僕ってなかなか人を嫌いにならないんですよ。(違う価値観を持っている人には)インタレストが向くんです」的な事を話していたが、まさにその性格が本にも現れていると感じた。なので、自分の常識に合わない人を叩いて自己を確立していく、そんな本を求めている人には物足りないと思う。あくまでテーマは「常識と非常識のあいだ」なのだ。

(おっさん的な価値観を持つ人とはさようなら、とはこの本は言わない)

 

 

さらに、そうような姿勢で人物をスケッチするだけでなく、自分はどう思うのか最終的に態度表明しているのもイイ。僕が一番モヤっとさせられるのは「まぁ、人それぞれやからね。ええやん」という寛容で優しい人なんだが、著者がそういう人ではなくてよかった(笑)。まぁ、中には結論をぼやかしていたり、絶対理解できない!という態度を表明していたりするトピックスもあるので、戦略的というよりあくまでナチュラルなのかもしれないけど……。

 

読み終えて、僕が大学で社会学を通じて学んだ「全ての物事は多面的である」という大事な事を思い出されてくれたし、「えっこれが常識なの」って人に出会えたのもよかった。ただちょっとあるある系が多いような気がしたので、パート2が出るならもっとパーソナルでマニアックなモヤモヤを増やして欲しいかも……。

 

ともあれ、この本の内容は飲み会のネタにもなるし、知らないうちに鋭くなった自分のトゲを削いでくれるかもしれないのでおススメです!

 

※ちなみに、僕は焼き鳥の串は外したくない派であり、ライブで歌う派です……。モヤっとさせて、すみません!!(本書のネタより)

 

モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ (幻冬舎文庫)